俺はさすらいの法術使い兼人形使い国崎往人。俺は路銀がなくてバスから下りたある街で
霧島佳乃という少女に出会った。そして、彼女の姉の診療所で住み込みのバイトを始めた。
その後、色々あって俺には法術が無くなってしまい、佳乃の家に腰を落ち着ける事にした。
…この事に関して使命を放棄したとか、自分だけ幸せになって、などという意見を見かけるが
俺にはなんの事だかわからない。
まだまだ暑い9月のある日、いつものように待合室で夕飯を食べた後、聖が話を切り出した。
「国崎君…、ちょっと聞くが、君は学校に行っていたのか?」
「小さい頃は寺にいたな。その後母親が引き取って旅をはじめた。
しばらくして母親がいなくなった後は一人で旅してきた。」
「往人くん、そんな事初めて聞いたよぉ。」
「そりゃあな、今まで言ったこと無かったから当然だ。」
「という事は、国崎君はろくに学校に行った事がないんだな。」
「まあそうなるな。」
それを聞き佳乃が不思議そうに聞いてきた。
「でも、往人くんはそれなりに勉強できるよねぇ。」
「ぴこーぴこー」
「それはな…前世話になっていたところの人がなぁ…」
「うんっ、うん♪」
「赤ペン先生のバイトをやっていてなぁ…俺も手伝っているうちにそれなりに覚えたってワケだ。
しかしアレは参ったよ。特に相談コーナーがな。なんで赤の他人にあんな相談が出来るのかねぇ。
『雪の降る日に気持ちを伝えられず別れた、いとこの男の子に気持ちを伝える方法は無いでしょうか?
毎年年賀状出しても返事が来ません。』ってそんな事知るかって感じだ。」
「それで往人くんはその質問にどう答えたの?」
「『信じて待っていれば、きっといつかめぐり合える時が来ます。』って書いたよ。なんの保証も
ねえのにな。そいつ今どうしてるんだろうなあ。」
「うーん、なんとなくだけど再会できているような気がするよぉ。」
「ぴこ−ぴこー」
「ま、それはともかく、国崎君は高校は出てないという訳だ。」
「…それがどうしたんだ?」
俺はさすがに気を悪くしたので、口調が乱暴になっていた。
「ダメだな…そのくらいでいちいち腹を立てていては。今まではそれでもよかったかも
しれないが、これからはこの街に住むんだからな、多少の我慢はしないと。それに
国崎君は言葉使いが乱暴すぎるな。私達は家族なんだから別にいいが、ちょっとは
言葉使いに気をつけたほうがいい。」
「家族…。やだな〜お姉ちゃん、あたし照れ照れだよぉ。」
佳乃は顔を真っ赤にして、聖の背中をバンバン叩いた。聖は顔をしかめながらも
叩くのを止めさせ様とはしてなかった。…家族か。母親が消えてから一人だった俺には
久しぶりに聞く…ちょっと待て。なんでいつの間に結婚する事になってるんだ?そりゃあ
佳乃の事は好きだが、まだ結婚は早いだろう。大体高1は結婚…出来るか。
「国崎君、一体どうしたんだ?ひょっとすると…ここを出ていく気なのか?」
一人物思いに耽っていたら、聖にそんな事を言われてしまった。途端に佳乃は涙ぐみ
俺にしがみついた。
「往人くん、そんなのイヤだよぉ。」
そして俺の胸でしばらく俯いていると、堰を切るようにしゃべり始めた。
「…わかった、あたしを捨てる気なんだぁ。いくらあたしからお願いしたからって一回抱いたら、
あたしはゴミ箱ポイポイポイのポイなんだ…。」
「ぐすっ、やっぱり男の人はあたしの身体にしかキョーミないんだ。ふぇぇぇぇん。」
佳乃は泣き出してしまった。聖の方からはものすごい殺気を感じるし、
ポテトは俺の足にに噛みついてるし、どうしようか?
…決まってる。この状態を何とかしないと、命に関わる。俺は佳乃のほおを
掴んで俺の方を向かせて言った。
「はははっ、俺はいつまでも佳乃の傍にいるって言ったじゃないか。」
「往人くん、セリフが棒読みになってるよぉ。」
…しまった。つい…。
「まあ、国崎君も責任を取ると言ってるし、これで私も安心だな。」
聖はわざとらしくそんな事を言う。くそー、このアマいつか犯す!
「国崎君、私を犯そうとはいい度胸だ。」
…しまった、口に出してしまっていたらしい。俺の人生もここまでなのか?
使命を放棄した報いかもしれない。俺も空の少女の元へ行くのかぁ?
「まあ、私はかまわないが、佳乃はいいのか?」
「うん、お姉ちゃんと往人くんと一緒なんて、盆と正月が一緒に来たくらい嬉しいよぉ。」
…なにぃ、これは意外な展開。以前した妄想みたいに、うはうは3Pなのかぁ?
「国崎君、にやけるのは勝手だが、私の豊満な身体を好きにするには条件がある。」
「…今の俺は大抵の事は成し遂げる自信があるぞ。フェルマー予想も証明して見せる。」
「あいにくだが、それはもう証明されてフェルマーの大定理になっている。残念だったな。」
「それじゃあ、往人くんを無知無知君1号に認定するよぉ。」
「ぴこぴこ〜。」
くっ…こいつら…なにもわかっちゃいねぇ…ボケたら、つっこむ…
それが無いと…せっかくのボケが…死ぬっ!
「それはともかく、フェルマー予想を証明できる国崎君なら大検なんか余裕だな。
この診療所を手伝ってもらうなら、高卒の資格くらい無いとな。」
「…ちょっと待ってくれ。」
「それじゃあ、明日からは国崎君の食事は食事前の小テストの結果次第ということになった。」
「それって、電波少年方式だねぇ。往人くん、頑張ってあたしとお姉ちゃんと一緒にしようねぇ。」
「ぴこぴこ〜。」
…翌日から俺が腹をすかせて勉強する羽目になったのは言うまでも無い。
くそー、真人間への道は長すぎる…。しかし、いつかあの聖の身体を好きに…
「国崎君、何をボーっとしてるんだ。今日も食事抜きでいいのか?」
「すみません、ここ教えてください…。」
「またか…しょうがないな。」
…そんな日は当分来ないだろう。
==終わり==
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